小野寺工業のチャレンジ

幾多の障壁を乗り越えて新事業開発に取り組む、メンバーとコンサルタントが織りなすドラマです

組織変更は手段のひとつでしかない! 「まずは組織変更」は日本企業の悪い癖だ

笠間の組織構想を練り始めた。それは、海外事業推進部を社長直下に立ち上げ、各事業部内に海外専任チームを置くというものであった。海外事業の全体責任は海外事業推進部が持つが、具体的なやり方は各事業部長に任せるという。

このやり方では、海外事業への力の入れ方は、国内事業しかやったことのない事業部長に委ねられることになってしまう。

笠間は「事業部長たちには、時間をかけて理解してもらうしかない」と言うが、たやすいことではない。

 

事業部長たちには危機感が欠如していた。頭ではわかっていたが、一歩踏み出すのはハードルが高い。

変化を嫌い現状にしがみつくこのような行動の理由を「過去の栄光を忘れられないからだ」とか「自分の立場の変化を心配しているからだ」とかもっともらしく言う人もいるが、実はそうでもない。

「新しいことを始めるのが面倒くさい」というのが本音で、明確な理由がないだけに、変革を進める側にとっては一番厄介だ。「今のままではマズいのはわかるが、もう少し様子を見てからでいいのではないか」となるからだ。

 

話を戻すが、笠間がそうであるように、すぐに組織をいじりたがるのは日本企業の特徴である。「改革は進んでいます」「改革の結果が出ました」と経営陣や株主たちにアピールするには、組織改革はわかり易く、都合がいい。

組織改革の目的もはっきりしないまま、新たな組織の責任や役割分担もないままに組織改革し「変革を進めるために、組織改革を行った」「新生した組織体制の中で、各組織の責任者はそれぞれに変革の進め方を考えなさい」と続く。

ところがこれが大きな落とし穴だということに、経営陣も現場も気付いていない。

 

組織改革で新しくなった組織のリーダーは、自分たちの居場所を作ろうとする。周囲との調整もせずに身勝手に高い壁を作り、自分たちの身を守る行動に出る。そして、壁の中から既得権を主張し始める。変革に向け、最大の阻害要因が生まれる瞬間である。

浦田は、このような光景を何度も見てきた。

 

浦田は、笠間から組織改革の内容を聴くことにした。笠間の頭の中は、どうすれば事業部長たちを海外事業に引き込めるか、それだけでいっぱいのようだった。浦田は話にうなずきながら注意深くチャンスを伺い、笠間が一息ついたときに「ところで」と切り出し、しばらく話した後、最後に話をまとめた。

「組織変更は組織の壁を作るのと同じなのです」

笠間は浦田の助言を受け入れることにした。

かくして組織改革は、今は行わず、海外事業立ち上げの方針が固まった後にすることで話は決まった。

 

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[場当たり的な後藤部長の思考]

目指す変革は、今の組織の責任や権限、役割分担のままでは実現できない。変革を推進する中央の組織が四の五の言ったところで進むわけがない。そんなことに時間を掛けても無駄だ。先ずは組織を再編することから始めるべきだ。

組織改革は変革の目玉だ。変革の行方は、当事者でもある新設された各部門に任せるのが得策だ。

 

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[本質に向き合う吉田部長の思考]

上層部はいつも組織改革を優先し、組織改革を変革の目玉にしてきた。このやり方では、変革が部分最適に陥ってしまうだけで、組織改革全体としての計画性などあったものではない。先ずは変革の全体像を磨き上げる必要がある。これによりやるべきことが見えてくるし、目指すイメージも具体化する。組織改革は、このイメージを実現するための手段でしかない。変革のイメージを描かず闇雲に行った組織改革は、変革を促進するどころか強固な壁となって立ちはだかる。

変革とは変化を受け入れることだ。事業がうまくいっていないのも、変革が思い通りに進まないのも、そこにいる人々のセクショナリズムやエゴに原因があるのだ。

 

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[ポイント]

変革推進組織が、変革の全体像を描き、それをたたき台に皆で磨き上げる。納得いく全体像ができたら、変革要素をテーマごとに分類する。テーマの対象領域を見極めたり、現状とのギャップを明らかにしたりしながらイメージ固める。テーマ間の相乗効果や依存関係なども明らかにしなければならない。

組織改革は変革要素のひとつにすぎず、計画上は後半に位置付けられる。組織機能や機能連携、ガバナンスの在り方などが決まった後だ。

縦横軸でガバナンスを効かすマトリックスマ型の組織では、責任と権限が競合することがよくある。組織設計は、これを効果的、効率的に動かすためのカギを握っている。だから組織体制は、最初に「えいや」で決まるものではない。

 

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