小野寺工業のチャレンジ

幾多の障壁を乗り越えて新事業開発に取り組む、メンバーとコンサルタントが織りなすドラマです

逆風の中で何を思うのか

小野寺工業は大型工作機の国内最大手である近畿工作機を主な取引先としていた。

大型工作機の場合、顧客ごとにさまざまな仕様で発注される。近畿工作機は顧客の要望に応じて大型工作機を開発する際、小野寺工業に加工制御装置の基本仕様を渡し、開発を指示していた。加工制御装置とは工作機の頭脳に当たる部分で、マン・マシン・インタフェースとしての操作画面を備えた箱型の装置である。小野寺工業と近畿工作機には資本関係こそ無かったが、小野寺工業は事実上、近畿工作機の系列会社の位置付けだ。

 

両者の関係は、小野寺工業の創立当時までさかのぼる。

小野寺工業は世間的に名の通った企業だが、これまでは、自主事業と呼べるものではなかった。近畿工作機の要求仕様を実現した加工制御装置を開発し、提供するだけだった。そのため、近畿工作機には商品企画部門は無かった。

 

近年、近畿工作機の事業運営は厳しさを増していた。

海外の大手工作機メーカーが日本市場に参入したのは10年ほど前。数年前までは目立った活動は無かったが、ここにきて、昔からの顧客を海外メーカーに取られることも増えてきた。

 

しかも汎用工作機の性能が向上するに連れ、これまでの大型工作機を小型の汎用工作機に置き換える顧客まで現れ始めたのだ。

汎用工作機メーカーの多くは海外勢である。彼らは小型工作機に特化し、破壊的な低価格で世界市場を席捲し、日本国内の小型工作機市場を破壊した。国内の小型工作機メーカーの大半が彼らの軍門に下った今、彼らは、大型工作機市場を次のターゲットにし始めたのだった。

 

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[場当たり的な後藤部長の思考]

市場実績もブランド力も投資能力もある大企業が、技術的にも劣るベンチャー企業にやられるわけがない。大企業が見捨てた魅力のない市場がベンチャー企業の主戦場になるだけで、世の中が騒ぐほどベンチャー企業は脅威にはならない。

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[本質に向き合う吉田部長の思考]

大企業が主戦場とする上位市場も、ベンチャー企業が主戦場とする下位市場も、「市場」という点ではつながっている。大企業が上位市場しか見ていないのは、単にそこがターゲット市場であるからに過ぎない。これはかなりリスキーなことだ。事業の今後を考えるには、市場全体を俯瞰してみるみないことには始まらない。先ずは顧客のセグメンテーションから始めて、各顧客セグメントの顧客の要求や期待を整理してみよう。そこに、大企業とベンチャー企業の戦略や立ち位置の違いを重ね合わせてみれば、事業環境の将来を予測できる。

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[ポイント]

大企業は、ベンチャー企業が事業環境にもたらす影響の大きさを受け入れなければならない。その上で、自分たちの成長戦略を練ることが必要だ。自分たちがこれまで歩んできた道をこれからも進むのか、それとも市場環境の変化を前提に新たな成長戦略を打ち出すのか。これまでの事業とは別に自律型のベンチャーを立ち上げるというやり方もあるだろう。

先ずは市場全体を俯瞰し、概念モデルにまとめ上げてみよう。その上で、自分たちの強み、弱みを整理し、市場の力学を読み解く。そしてこれらを重ね合わせて自分たちの事業方針を明らかにする。

 

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