小野寺工業のチャレンジ

幾多の障壁を乗り越えて新事業開発に取り組む、メンバーとコンサルタントが織りなすドラマです

[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(1/5)

l  オファリングモデルは単なるセット販売ではない

 

オファリングモデルの説明をすると「うちでも似たようなことはやっています」という反応が返ってくることがある。詳しく聞くと、そこには「オファリングモデル≒セット販売」という勘違いがあった。

はっきりと言っておこう。オファリングモデルは単なるセット販売ではない。

 

セット販売とは、これまでバラバラで販売していたものをひとまとめのセットにしたに過ぎない。ひとつひとつ悩みながら構成要素を選ばなくてもいいという点、組み合わせの相性を気にする必要がない点などが顧客側のメリットだ。提供側のメリットは、他社に邪魔されることなくすべての構成品を自分たちが受注できる点、組み合わせの相性を都度検証するという手間が省ける点、在庫パターンを単純化して在庫を削減できる点、一部の構成品の競争力のなさを他の構成品で補える点などだろう。

セット販売が効果的な販売手法であることは事実だ。特に、知識や鑑定力に自信のない顧客、拘りのない顧客には効く。しかし、オファリングモデルがビジネスにもたらす価値は、こんなものではない。

 

セット販売に相当するものを、オファリングモデルではソリューションと呼ぶ。ただし「相当する」というには語弊がある。見た目は同じようにも見えても、中身が全く違うからだ。セット販売が過去の実績や使われ方を考慮した単なる「組み合わせ」であるのに対し、ソリューションは顧客に価値を提供するための手段であり、顧客の課題を分析した結果として手に入る。しかもソリューションには、自分たちが選ばれる理由が作り込まれていなければならない。

オファリングモデルの検討が市場分析や顧客観察から始まる理由はそこにある。

 

l  オファリングモデルと事業運営をつなぐには「付属品」が欠かせない

 

ソリューションはオファリングモデルの柱だが、それだけではオファリングモデルは成立しない。これを成立させるために、オファリングモデルの「付属品」ともいえるその他の構成要素が脇を固める。

 

オファリングモデルは事業運営の中核を成す概念であり、ビジネスに異次元の進化をもたらす。重要な役割を果たすのは、オファリングモデルと事業運営をつなぐインタフェースだ。このインタフェースの役割を担うのが「付属品」である。

 

オファリングモデル 「顧客起点のソリューション」+「事業運営とのインタフェースを担う付属品」

 

付属品の例を挙げておこう。

   「事業部ごとにバラバラだった事業運営を、オファリングモデルの概念がひとつにまとめ上げる」の図を参照のこと

 

   ターゲットセグメントと売上見込み

   提供モデル、収益モデル、販促モデル
(これら3つを私は「狭義のビジネスモデル」と呼ぶ)

   提案・提供計画、提案・提供リソース

   提案ツールや提案技法

   価格や利益

 

市場分析や顧客観察をもとにオファリングモデルを検討するわけだが、最初に検討するのはソリューションばかりではない。ソリューションには「顧客の存在」(価値を享受するのは誰か)が欠かせないからだ。

ソリューションを検討する際は、同時にターゲットセグメントを検討することになる。

 

「このマーケットセグメントはこんな課題を持っている」

「ゆえに、こんな価値提供が効果的だ」

「そのためにはこんな技術で、こんな構成品で、こんなソリューションを提供すればいい」

「しかも、この技術や構成品は、自分たちの十八番だ」

「この技術をソリューションに組み込めば、顧客は更なる利便性を手にできる」

「よし、このターゲットセグメントにこのソリューションを提供しよう」

 

ソリューションとターゲットセグメントが決まれば、オファリングモデルの売上規模を見積もることができる。複数のオファリングモデルを重ね合わせることで事業計画の目途が立つというわけだ。

 

提供モデル、収益モデル、販促モデルに代表される「狭義のビジネスモデル」は、その後の検討で明らかになる。どんな事業活動が成功のカギを握るのか、自分たちはどこに集中しどこを外出しすればいいのか、顧客との間にどんな関係を構築すべきなのか、どんなチャネルが効果的なのかなどは、この検討を通じて明らかになる。

 

「狭義のビジネスモデル」が明らかになれば、ソリューション(=提供価値)を提案するための提案計画や、提供に向けた提供計画を練ることができる。

計画作成の過程で、提案活動や価値提供(商品の開発、製造、構築や設置など)に必要なリソースの種類や量、必要な期間などといったリソース計画が明らかになる。組織としてどういったリソースをどれだけ、どの時期に確保するかは事業運営上の重要テーマだが、これはオファリングごとのリソース計画を集約することで可能になる。

 

「狭義のビジネスモデル」を検討する際には「選択と集中」が議論の土俵に上がる。何を自前し何を外出しするかを、競争力と事業効率の両面から検討することになる。選択と集中の議論はパートナリングに通じる。

リソース計画の過程で、所要量を自分たちだけでは賄いきれない、もしくは必要なスキルが組織内に存在しないことが明らかになる。このような場合には外部調達を検討せざるをえない。これらの議論を通じてパートナリングの在り方が明らかになっていく。この延長上にパートナー戦略が浮かび上がってくる。

 

たいていの場合、投資なくしてオファリングモデルは実現しない。販売促進の一環としてのイベント開催や市場への告知、提案に必要なツールの整備や提案技法の習得、ソリューション開発、製造設備強化、スキル開発、パートナリング活動など、多くの投資事案が積み上がる。ROI(投資対効果)の検討は欠かせない。

ところが、オファリングモデルごとにROIを積み上げるだけでは、組織として最適な投資を行ったことにはならない。オファリングモデルごとの検討を重ね合わせ、組織として最適な投資計画を立てる必要がある。

 

オファリングモデルを考える上で価格設定は重要テーマのひとつだ。市場での価格競争力や顧客の納得感、自分たちが目標とする利益や利益率、これらのバランスが価格設定のポイントとなる。価格競争や顧客の懐具合などで設定価格を下回らざるを得ないケースもあるが、オファリングモデルに設定された価格を現場の判断で安易に変更すべきではない。オファリングモデルは事業全体のバランスの上に成り立っているのだが、価格はそのバランスを維持する上で最も重要な要素のひとつだからだ。

 

ソリューションとターゲットセグメント、狭義のビジネスモデル、リソース計画とパートナー戦略、投資計画に価格設定、これらすべての要素は複雑に影響しあっており、微妙なバランスの上に成り立っている。それゆえ私たちは、イテレーション短い間隔で反復しながら行われる開発サイクル)を通じてオファリングモデルの完成度を高めなければならない。

 

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