小野寺工業のチャレンジ

幾多の障壁を乗り越えて新事業開発に取り組む、メンバーとコンサルタントが織りなすドラマです

事業戦略

【 最終回 】[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(5/5)

● 結局、定着のカギを握るのは現場の当事者意識だ オファリングモデルの導入は事業運営方法の刷新を意味する。これはまさに組織を上げての大仕事なわけで、ガバナンスに難のある日本企業がこれをトップダウンで実現するのは難しい。つまり、組織の観点と現場…

[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(4/5)

l オファリングモデルを支える事業運営の仕組みを整備する オファリングモデルをうまく導入できたとしても、これを支える事業運営の仕組みが整わないままでは大きな効果は期待できない。導入手順の説明では「⑥ でき上がったすべてのオファリングモデルを重ね…

[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(3/5)

l オファリングモデルの導入にはさまざまなキーワードが存在する オファリングモデルの導入手順を足早に説明してきたが、これにビジネス上のキーワードを重ね合わせてみよう。小野寺工業の新事業立上げストーリーにはさまざまなキーワードを盛り込んだが、ほ…

[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(2/5)

l マトリックス型事業運営の悩みをオファリングモデルが解決する オファリングモデルは事業運営の基礎をなす。 意志薄弱な行動を繰り返してきた事業運営は、オファリングモデルの採用により大きな第一歩を踏み出すこととなる。オファリングモデルという背骨…

[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(1/5)

l オファリングモデルは単なるセット販売ではない オファリングモデルの説明をすると「うちでも似たようなことはやっています」という反応が返ってくることがある。詳しく聞くと、そこには「オファリングモデル≒セット販売」という勘違いがあった。 はっきり…

社長就任演説「皆さんの言葉でチャレンジを語ってください」

翌年、大島は異例の人事で代表取締役社長に就任した。高齢の前社長の交代は陰で囁かれていたが、後釜に大島を予想した者はほとんど誰もいなかった。 早朝、大島は幹部を集めて社長就任の挨拶をしたが、それは社員を叱咤し、更なる変革と成長の必要性を訴えか…

コンサルタントは潤滑油であり、改革を成功に導いたのは「会社への深い愛情」と「不退転の覚悟」だった

笠間たちのアプローチは功を奏した。一時は低迷した海外事業はかつての活気を取り戻し、プラス成長へと転じた。 大島は、笠間と浦田を銀座の小さなイタリアンレストランに招待した。オーナーシェフとその家族で経営するこの店は、大島の30年来の行きつけだっ…

お客様との議論はディスカッションマテリアルで盛り上げる

笠間たちはアポロマシナリー対応をしている営業担当者を呼び出した。 夕方から始まった会議は深夜まで続いた。 笠間は「戦略的パートナー」の話を興奮気味に説明した後、顧客との関係構築の必要性を熱く語った。「ディスカッションマテリアル」という言葉が…

「顧客の顧客」が抱える潜在的な課題をつかみ、顧客にとっての戦略的パートナーを目指す

アポロマシナリーへの顧客開拓活動がスタートしたのはこの直後だった。 アポロマシナリーからは以前に引き合いがあり、加工制御ソフトウェアを提供した実績があった。関係者の話ではその後も細々と関係は続いているようだったが、それを裏付ける情報は見つか…

顧客との間で戦略的パートナーの関係を築き、RFPの前に自分たちの強み(=選ばれる理由)を刷り込め

季節は夏に近づいていた。新体制が発足してすでに3ヶ月が経過していた。 笠間たちOBFコアチームの活動は、計画から計画の実行に移り、そろそろ実績につながるきっかけくらいは出てきてほしい時期に差し掛かっていた。 新組織が発足する少し前あたり、事業計…

投資には「ポジティブ」と「ネガティブ」があり、ポジティブな投資は、将来に引き継ぐ価値を生み出すことで次の戦略を支える

「今日は投資についてお話させてください」 浦田は笠間たちOBFコアチームを前にしてこう切り出した。 岡を中心に進めている市場分析は順調に完成に近づいており、そろそろ投資計画を具体化しなければいけない時期だった。 「投資には、ポジティブな投資とネ…

事業立ち上げには情報が欠かせないが、これがネックとなることは多い まずはクイックに動き、情報収集のための予算を獲得しよう

役員会では投資に対する議論が交わされた。 東南アジア向けの汎用工作機の開発、東南アジアにおける汎用工作機メーカーの買収、大型工作機メーカー向けの加工制御装置ベースシステムの開発にはまとまった金額の投資が必要となる。小野寺工業にとっては、どれ…

新しい事業を立ち上げるには既存顧客を狙っていたのではダメ! マーケットセグメンテーションから始めてターゲットを絞り込もう

笠間たちは海外の情報を収集し、大型工作機メーカー、装置メーカー、構成機器メーカーといった大型工作機の提供側とそれを購入する側にどんなプレイヤがいるのかを調査した。笠間と浦田は、以前に大雑把な議論をしたことはあったが、情報収集するのはこれが…

なぜ選ばれるのか? 誰に選ばれるのか? 企業にはこの問い掛けが特に大切だ

ソリューション型を目指すことは決まった。 しかし、これは「どうやって海外事業を立ち上げるのか」の答えにはなっていない。 自分たちの競合相手になるのは、マーケットインのソリューション型で戦ってきている強敵たちだ。世界的には風変わりでしかない、…

御用聞きでは世界に通用しない! 顧客を観察し、顧客の要求を射止めたソリューションで勝負する

「どうやって海外事業を立ち上げるのか」 笠間たちコアチームのメンバーは、この難題に正面から向き合うことを決めた。 その手始めに、事業方針をざっくりと固めることになった。 小野寺工業の社員たちは顧客の要求に応えるリアクティブな活動に慣れ切ってい…

最初に大切なのは、状況を大きくとらえて事業のイメージを固めることだ

笠間は事業立ち上げに着手したが、それは雲をつかむような話だった。Push型、Pull型の話も内容としては理解できたが、それを実現しようとするとイメージがわいてこなかった。 浦田は笠間からの相談を受け、彼なりの事業立ち上げイメージを説明した。根底には…

事業運営のスタイルをPull型からPush型に切り替え、攻めに転じる

大島は、こんなこともあろうかと予備予算を確保していた。浦田は、この予算でOBFの支援を引き受けることになった。 コンサルタントが顧客に受け入れられるのは簡単ではない。特に日本の製造業はよそ者には閉鎖的だ。いきなり「ああしろ、こうしろ」とやった…