小野寺工業のチャレンジ

幾多の障壁を乗り越えて新事業開発に取り組む、メンバーとコンサルタントが織りなすドラマです

最初に大切なのは、状況を大きくとらえて事業のイメージを固めることだ

笠間は事業立ち上げに着手したが、それは雲をつかむような話だった。Push型、Pull型の話も内容としては理解できたが、それを実現しようとするとイメージがわいてこなかった。

浦田は笠間からの相談を受け、彼なりの事業立ち上げイメージを説明した。根底には、かつてハイテクメーカーで同じような事業立ち上げに関わった際の気付きや反省があった。

 

先ず、海外市場の情報を収集し、業界プレイヤを調査する。ただし、時間はかけない。次に、自分たちの商材(加工制御装置、加工制御ソフトウェア、機器など)や技術を棚卸しし、事業方針をざっくりと固める。この時点で経営陣に中間報告し、組織の承認をとる。

市場分析の結果からマーケットセグメンテーションを実施し、ターゲットセグメントを決める。この際、汎用工作機や加工制御ソフトウェアの販売を含む広い範囲を検討対象とする。

自分たちのコアコンピタンスや「なぜ選ばれるのか?」を特定する。

事業立ち上げに必要な組織機能やスキルを洗い出し現状とのギャップを明らかにしたら、いよいよビジネスモデルを描く。

ビジネスモデルを描いたら、それをどのような手順で実現するかを考える。

先ずは事業立ち上げシナリオをステップ・バイ・ステップで描き出し、第一歩を踏み出すための新しい組織体制を設計する。

事業計画を作成し、最終的には事業立ち上げに向けた投資計画をまとめ上げる。

 

浦田の説明に、笠間は腹落ちするまで質問した。

 

「海外市場の情報にはどの程度の詳細さが必要なのか」

マーケットセグメンテーションとはどんなものか」

コアコンピタンスと競争優位性は何が違うのか」

(浦田が「コアコンピタンスとは、顧客から見た「買いたい理由」であり、他社がたやすく真似できるようなものではない」と答えた)

「ビジネスモデルでは、何をどの程度詳しく描き出せばいいのか」

 

浦田も質問した。

 

「業界プレイヤにはどういう人たちがいるのか」

(笠間は、大型工作機メーカーや加工制御装置のような装置メーカー、構成機器メーカー、などと答えたが、浦田がそれに「大型工作機の顧客」と付け足した)

「大型工作機の顧客は、どんな理由でメーカーを選んでいるのか」

「大型工作機メーカーは、どんな装置を外部調達しているのか」

 

昼過ぎに始めた議論は、ホワイトボードを何面も使いながら夜中まで続いた。

 

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[ポイント]

関係者それぞれの立場や経験からくる偏った議論を避けるためには、参加者全員で全体像を描き、全員で腹落ちすることが大切である。

全体像を描けたら改めて皆で俯瞰しよう。そこに潜むリスクや課題はもちろん、何を検討すべきかが見えてくる。検討要素の依存関係や相乗効果、優先順位を議論すれば、検討の順番が決まる。これが決まれば、具体的な検討に移ればいい。検討中も迷ったときは全体像に立ち戻ればいい。横道に逸れてもゴールを見失うことはない。

ただし、検討に無駄に時間をかけてはいけない。納得したところでやめればいいし、長時間議論したところで内容が深まるとは限らない。そこから先は、走りながら考えればいい。

「検討すべきこと」を明確にしておけば、場当たり的な人たちに押し切られることはない。

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[場当たり的な後藤部長の思考]

変革方針は大雑把ではあるが決まった。わからないことがあれば、やりながら考えればいい。

最初から分かっている人なんて誰もいやしない。抽象的な議論は時間の無駄だから、先ずは始めてみよう。目の前には、やるべきことは山積みなのだから。

走りながら考える、それが大事だ。

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[本質に向き合う吉田部長の思考]

いきなり目の前のテーマにターゲットを絞り、具体的な議論に参加者を誘導するのはやめた方がいい。

人はそれぞれ、立場や経験の違いから、見える範囲や問題意識に違いがあるものだ。その違いを放置したまま具体的な活動に着手のでは、そのうちにお互いの問題意識や価値観の違いが表面化する。大きな亀裂が生まれ、議論が前に進まなくなるだけだ。

しかも、今、目の前に見えている課題は氷山の一角かもしれない。状況が進んだところで前提条件が揃っていないことに気付くかもしれないし、解決に時間のかかる問題が予期せず現れるかもしれない。そうなってしまってから対応を考えたのでは「後の祭り」だ。「もっと早くに検討しておけばよかった」という思いは、誰しも経験があるだろう。

具体的な議論に入る前に、「何を検討すべきか」を、関係者で腹落ちするまで考えてみることが大事だ。

皆で議論すれば全体像が描ける。全体像が描けば何を検討すべきかが見えてくる。目的を見失うことなく関係者全員でゴールを目指すには必要な作業だ。やってみれば、意外に時間はかからないものだ。

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