翌年、大島は異例の人事で代表取締役社長に就任した。高齢の前社長の交代は陰で囁かれていたが、後釜に大島を予想した者はほとんど誰もいなかった。
早朝、大島は幹部を集めて社長就任の挨拶をしたが、それは社員を叱咤し、更なる変革と成長の必要性を訴えかける内容だった。
大島は言った。
「4年前、私たちは危機的な状況に直面していました。ご存知でしたか」
参加者の多くは呆気に取られていた。自分たちが危機的な状況にあったという認識が無かったからだ。
「自分たちの会社は順調に成長してきた」というのが彼らの思いだった。
大島は続けた。
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あのとき、事業環境は大きな変化の時を迎えていました。幸いにして、一部の人たちがそのことに気付きました。そして、かつて経験したことのないチャレンジに取り組んだのです。その結果、2つの事業が生まれ、今も成長を続けています。その2つとは、東南アジア向けの汎用工作機事業と欧米の大型工作機メーカー向けの加工制御装置事業です。いずれは、これまで私たちが「中核」に据えてきた国内大手工作機メーカー相手の事業に利益面で肉薄するでしょう。売上規模ではまだまだですが、利益率が高いです。
これを誰が成し遂げたのか、皆さんはご存知でしょう。笠間さんを中心とするOBF変革チームです。
当初、彼らの置かれた状況は五里霧中でした。そんな中で、笠間さんは高いモチベーションと並外れた想像力を発揮し、進む道を照らし出しました。笠間さんのリーダーシップやメンバーのチャレンジ精神には頭が下がります。
何よりも、彼らは辛抱強く事に当たってくれました。
さまざまな工夫やアイディアは、半信半疑だった周囲の関係者を本気にさせました。これはすごいことです。なんせ私たちは創業以来100年間、大きな変化を経験してこなかったのですから。
私たちの企業人としてのDNAにチャレンジ精神はありませんでした。それが、この4年間で生まれ変わりました。私たちは今も進化の途中ですが、この進化を止めるわけにはいきません。
私たちは、お客様からの指示を待っていてはいけません。お客様と同じ側に立って考え、工作機の利用者に価値を提案し、提供しなければなりません。
お客様は世界中にいます。そして、ライバルはグローバルカンパニーです。
私たちはまだまだ未熟ですが、その分、可能性を秘めています。完全に生まれ変われるまで、私たちは変化し続けなければなりません。自ら変化を起こせる会社になるまで、私たちに立ち止まることは許されないのです。
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大島は、中期事業計画を発表した。それはチャレンジングなものだった。
最後に、大島は笠間をCTrO(Chief Transformation Offiser:最高変革責任者)に任命した。笠間の下には変革オフィスが設置され、OBFの初期メンバーが名を連ねた。
大島は、以下の言葉で就任の挨拶を締めた。
「さあ、今日の朝礼では、所属員の皆さんに、私たちのチャレンジについて語ってあげてください。皆さん自身の言葉で語ればいいのです。皆さんは、このチャレンジのリーダーなのです」
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